でかい蛇 裸に巻けば そりゃ映(ば)える

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夏休みのその日、2人の息子は朝から浮き足立っていた。


兄弟はとにかく生き物全般が好きで


初めて訪れる爬虫類のテーマパークに


前の晩もほとんど寝られず


朝食を食べる間も移動の車の中も


パンフレットや図鑑を見ながら、


パーク内のアトラクションや展示されている


爬虫類について話し続けて興奮しっぱなしで


両親の話などまるで耳に入っていなかった。


パークに入ってからは目に入るもの


全てに全身でリアクションし、


写真も撮れるかぎり撮りまくった。


そして名物の大蛇ブースに着いた時、


兄弟の興奮はピークに達した。


「こんな大きな蛇見た事ない!」


2人は驚嘆のあまり変に上ずった声をあげた。


巨大な生物を見た時、


人間は誰でもある種の驚きと感動を覚えるものだ、


または恐怖する場合もあるかもしれないが


まぁ、身の安全が保障されていれば大抵は感動するに違いない。


しかし兄弟をもっと驚かせたのは巨大なヘビよりも


そのヘビを見た父親のリアクションだった。


元々父は流行り物が大好きで今回のテーマパーク行きを


計画したのも彼だったし、彼はSNSにも熱心だった。


話題のかき氷があれば飛んで行って食べ、


動物園では虎の赤ちゃんを抱っこし、


どこの何であろうと「顔はめ看板」があれば顔を入れた、


もちろん自撮りは欠かさない、彼はそうゆう生き様の人なのだ。


そしてその生き様とSNSと言う時代のツールが


見事に合致していた。


彼は素人にしてフォロワー数10万人を超える


立派なインフルエンサーだった。


テーマパークで興奮していたのは息子達だけではなかったわけだ、


大蛇を前にして父の興奮と自撮り魂はもはや抑えきれなかったし


何か強い使命感のようなものすら感じていた。


父は母親と係員の制止を振り切り真っ先に服を脱ぎ、


息子達にも脱ぐように指示した。


全ては写真映えの為、息子達も父親の只ならぬテンションに


抵抗しても無意味だと本能で悟り仕方なく服を脱ぎ捨てていた。


3人は大蛇を体に巻くと適当な岩の前でポーズを決める。


そして、とりあえず撮らなきゃこの場が収まらないと


覚悟を決めた母親がシャッターを切る。ハイ、チーズ。


この一瞬、一家を取り巻く光景は言葉に出来ない


圧倒的な熱量を帯びており、長年の自撮りで鍛えられた


父のポージングセンスが生み出した


ヘビと息子達を絡めた完璧な造形は周りの人々の


目にも不思議と神々しく映り


まるで暗闇を背に美しい肉体が輝いているようだった


そしてシャッターを切る一瞬、辺りの全てが静寂に包まれたという。


その後、服を着た父親を係員が叱っていると


背後から別の家族が


「あのぅ、ウチの家族も大蛇と記念撮影したいんですけど。。」


と申し訳なさそうにカメラを握りしめて立っている。


気付けばその後ろにも別の家族やらカップルが


列になって待っているではないか!


話を聞きつけた園長はこれは金になる!


と直感し大蛇の記念撮影を有料にする事で承諾したのだった。


この件を始まりとして2018年の現在でも


ヘビを首に巻いて記念撮影をする文化が定着しているのである。


ちなみに「長蛇の列」の語源はこの時、

あまりにも長い順番待ちの列を見て

係員が言った一言だという説もある。




上の写真は7月に上野のミケランジェロ展を

観に行った時に撮影可能だったレプリカ作品。

この像について正しいお話は各自「ラオコーン」

で検索してください。


今週からもう通常の一週間が始まり、気が重いです。。


また次回。




camera / SONY α7II + Planar 50mm 1.4















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by chi_bo321 | 2018-08-28 13:44 | SONY α7II | Comments(0)